420冊目:ダークツーリズム
悲しみの記憶を巡る旅 井出明著
世界では、人類の悲劇を巡るダークツーリズムが人気だそう。日本人の感覚からすると気楽に観光することへの抵抗は強いと思う。実際に東日本大震災の後、観光に行くのをためらうところがある。興味本位ではダメなんだという気持ちがある。
でも、本当の悲劇は歴史そのものが忘れられることだと筆者は言う。
本の中ではいくつか筆者が訪れたいわゆる歴史のダークな部分を紹介してくれているが、中でも胸の打ったのは、第二次世界対戦中の樺太の真岡(現在のホルムスク市)にある郵便局から現地の様子を稚内に伝えていた女性職員。ソ連の宣戦布告により毒薬が配られている状況で、ぎりぎりまで通信を行い、最後には「皆さん これが最後です。さよなら さよなら」最後まで自分の職務を全うし死に向かった女性職員たちの生きざまは日本人の使命感、責任感が強く感じるところ。そう、やっぱりこういったところは忘れられてはいけない。ダークツーリズムの大事さがわかった。
コロナ禍で改めて旅がしたいと思った。